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MMT入門：お金はなぜ信頼できる？ MMTが解き明かす「信用」の仕組み

Tags: MMT, お金, 信用, 通貨の仕組み, 政府債務

普段使うお金、なぜ「ただの紙切れ」じゃないの？

私たちは日々、お買い物をしたり、給料を受け取ったり、税金を払ったりと、当たり前のように「お金」を使っています。紙幣や硬貨、あるいは銀行口座のデジタルな数字など、お金の形は様々ですが、私たちはそれらを疑いなく「価値のあるもの」として受け入れています。

でも、冷静に考えてみると、紙幣はただの特殊な印刷が施された紙切れですし、銀行口座の数字はコンピューター上のデータに過ぎません。なぜ、私たちはこのような「ただの物質」や「ただのデータ」を、食料品やサービスと交換できると信じているのでしょうか？

ここに関わってくるのが、「信用」という概念です。そしてMMT（現代貨幣理論）は、この「信用」こそが、私たちのお金が機能する上での決定的に重要な要素であると考えます。この記事では、MMTの視点から、お金の「信用」がどのように生まれ、なぜそれが私たちのお金の価値を支えているのかを解説します。

MMTが考える「お金の正体」と「信用」の関係

MMTでは、現代のお金、特に政府が発行する「主権通貨」（日本なら円）は、政府の「負債」、つまり「借用書」のようなものであると考えます。これは、政府が国民に対して何かを受け取る権利、具体的には「税金」を受け取る権利を、通貨を発行することで放棄していると捉えるからです。

もう少し分かりやすく言えば、政府が「この紙幣や銀行預金を持っている人は、将来、私が税金という形で受け取るべきものを、これで帳消しにできますよ」という約束をしている、ということです。

この「税金で清算できる」という政府の約束と、そして何よりも「国民には税金を払う義務がある」という事実が、その通貨に対する「信用」の核となります。なぜなら、私たちは税金を払わなければならないため、誰もがその通貨を手に入れようとし、またそれを受け取ろうとするからです。

考えてみてください。もし誰もが税金を払う必要がなく、政府もその通貨を全く受け取らないとしたら、私たちはその通貨をわざわざ手に入れようとするでしょうか？ おそらくしないでしょう。政府がその通貨を「受け取る」という行為（特に納税）が裏付けとなって、初めて通貨は社会全体で通用する「価値」を持つことができるのです。

これを図でイメージしてみましょう。政府が通貨（政府の借用書）を発行し、市場に供給します。国民や企業はその通貨を受け取り、経済活動を行います。そして最終的に、国民や企業はその通貨を使って政府に税金を支払います。この「政府が発行し、国民が受け取り、国民が税金として政府に戻す」という循環そのものが、通貨に対する信用を生み出し、維持していると言えます。

「信用」がお金の価値を決める

MMTの視点では、お金の価値（購買力）は、その通貨を発行している政府や中央銀行に対する「信用」の度合いに強く依存します。この信用には、様々な要素が含まれます。

これらの要素に対する信用が高ければ高いほど、その通貨は安定した価値を持つことができます。逆に、政府が不安定になったり、約束を守らなかったり、インフレを抑えられなくなったりすると、その通貨に対する信用は失われ、価値が大きく下がってしまうことがあります。過去にハイパーインフレーションを経験した国では、まさにこの「信用」が失われた結果、通貨が紙くず同然になってしまったのです。人々が「このお金を受け取っても、明日はもっと価値がなくなっているかもしれない」「政府はもうこのお金で税金を受け取ってくれないかもしれない」と感じ始めた時、その通貨は急速に使われなくなります。

まとめ： MMTが示すお金の「信用」の重要性

MMTは、私たちのお金が単なる物理的な物質やデータではなく、発行者である政府への信頼と、税金という形で政府がその通貨を受け取る義務によって裏付けられた「信用」の上に成り立っていることを明らかにします。

政府が通貨を発行し、それを税金として受け取るというシステムは、通貨に価値と安定性を与えるための重要な仕組みです。したがって、政府の財政運営や経済政策は、単に「収入と支出のバランス」を見るだけでなく、私たちが使う通貨の「信用」を維持し、強化するという重要な役割を担っているとMMTは考えます。

お金の仕組みを「政府が発行する借用書であり、税金によって信用が裏付けられている」と捉えることで、なぜ政府がお金を「創り出す」ことができるのか、なぜ政府の財政が家計とは全く違うのか、といったMMTの様々な主張が、より深く理解できるようになるでしょう。お金の価値は、私たちの社会全体の「信用」によって支えられているのです。